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飛魚的悲哀

しい駅をおり

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しい駅をおり


「な、な、なんですって、珠次郎……珠次郎というんですか」
 金田一耕助が、こうふんしたときのくせで、がりがり頭をかきまわすのを、等々力警部はふしぎそうに見まもりながら、
「金田一さん、どうかしたのですか。珠次郎とhifu 優惠いう名に、なにか心あたりがあるんですか」
「警部さん、待ってください。ぼくはなんだか気がくるいそうです」
 ああ、なんということだ。剣太郎、珠次郎、鏡三……そして、同じかまえの三つの家。……ああ、ひょっとすると、剣太郎や鏡三のほかに、もうひとり、あのふたりに生きうつしの少年がいるのではあるまいか。
 金田一耕助がふかい思いにしずんでいるのを、等々力警部は見まもりながら、
「金田一さん、あなたがなにを考えていられるのか知りませんが、わたしも、これは容易ならぬ事件だと思うのです」
 警部の声もきんちょうしている。
「はア、容易ならぬ事件というと……」
「あなたのご注意で、わたしは鬼丸博士の過康泰旅行社去をしらべてみました。あいつはあれで、そうとうえらい生理学者なんですよ」
「そのことなら、ぼくも知っています」
「そう、ところであいつの先生というのをごぞんじですか。あいつの先生は、なんと、怪獣男爵なんですよ」
「な、な、なんですって?」
「しかも、その怪獣男爵が、こんどの事件に、関係しているのじゃないかと、思われるふしがあるんです。と、いうよりも鬼丸博士はたんなる手先で、怪獣男爵こそ、この事件の張本人ではないかと思われるのです」
 それをきくと、さすがの金田一耕助も、まるでゆうれいにでも出あったように、みるみるまっ青になってしまった。
 ああ、それにしても金田一耕助を、かくまでもおそれさせる怪獣男爵とは、いったいどのような怪物だろうか。
 それはしばらくおあずかりとしておいて、ここでは鬼丸博士と津川先生を追っかけていった、立花滋と謙三の、その後のなりゆきをお話することにしよう。

 中央線の|国《こく》|分《ぶん》|寺《じ》|駅《えき》から、支線にのって二十分。|武蔵《む さ し》|野《の》の原っぱにある、さびて、さらに十耳鼻喉科診所五分もあるいたところに、ふしぎな洋館がたっている。
 赤レンガの古めかしい洋館で、壁いちめんに、つたの葉がおいしげっているところが、いかにもいんきで、気味のわるい感じである。
 むろん近所に家とてもなく、ところどころに、雑木林があるばかり。そういう雑木林にかくれるように、その気味わるい洋館はたっているのだ。
 さて、上野の博覧会で、あのようなさわぎがあってから数時間のち、日もとっぷりとくれはてた、夜の八時ごろのことだった。雑木林のなかにねそべって、さっきからこの洋館をうかがっている、ふたつの影があった。いうまでもなく、立花滋と謙三である。
「にいさん、たしかにこのうちですね」
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