忍者ブログ

飛魚的悲哀

なんでもない

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

なんでもない


 おじさんはときどきそこで、へんな皿や花びんを買っては、掘りだしものをしたととくいになっていたが、いま、杉というひとの絵を見つけたのもその古道具屋だったのである。
 それは西洋の泡菜 食譜悪魔らしく、ツノのようなふさのついたずきんをかぶり、ぴったり肉にくいいるようなじゅばんを着て、おどりながら、笛を吹いている全身像なのだが、じゅばんもずきんもまっ赤なばかりか、バックまでが、えんえんと燃えあがる火の赤さなのだ。
 良平はなんとなく気味が悪くなって、
「おじさん、おじさん、杉というひとはどうして死んだの。病気だったの?」
 とたずねると、おじさんは絵にむちゅうになっているのか、うわのそらで、
「ううん、病気じゃない。自殺したんだ」
「自殺……?」
 良平が目をまるくしていると、
「そうだ。気がちがって自殺したんだ。いかにも天才画家らしいじゃないか」
 と、おじさんはなおも熱心に、その絵に見入っていたが、
「そうだ。ぼくはまだ、ねえさんに、新築祝いをあげてなかった。ひとつ、これを買っておくることにしよう。応接室の壁に、ちょうど、てごろの大きさじゃないか」
 と、奥のほうへいきそうにしたので、びっくりしたのは良平である。
「おじさん、およしなさいよ。こjacker薯片の絵、気味が悪いよ。それに自殺したひとの絵なんか……」
「アッハッハ、良平は子どものくせに、いやに迷信家だね。そんなこと、さ」
 店の主人にかけあうと、ねだんもてごろだったので、金をはらって、あとからとどけてもらうことにしたが、そのときだった。
 表からはいってきた黒メガネの男が、その絵を見ると、びっくりしたようにそばへより、しばらく、熱心に見ていたが、やがて主人にむかって、
「きみ、きみ、この絵はいくらかね。わたしにゆずってもらいたいのだが……」
 とたずねた。主人はこまったように、
「いえ、あの、それはたったいま、このかたにおゆずりしたばかりで……」
 それを聞くと、黒メガネの男は、ギロリと欣三おじさんの顔を見て、
「しつれいですが、この絵をわたしにゆずってくださらんか。いくらでお買いになったのか知りませんが、わたしは倍はらいます」
 と、はや、紙入れをだしそうにしたので、欣三おじさんはムッとして、
「お気のどくですが、それはおことわりします」
「倍で気にいらなければ、三倍でも四倍でも……」
 それを聞くと欣三お幫助消化じさんは、いよいよふゆかいな顔をして、
「いや、ぼくはもうけようと思って、この絵を買ったのじゃありません。気にいったから買ったのです。十倍が百倍でも、おゆずりすることはできません。おい、良平、いこう。おじさん、晚までにとどけてくれたまえ」
PR

コメント

プロフィール

HN:
No Name Ninja
性別:
非公開

P R